読書仲間から何回か勧められていた桜庭一樹。
今や時の人となっているのにもかかわらず、なかなか手に取らなかったのは、彼女のエッセイを読んだ時にあまりぴんとこなかったから。
ところが、この間会った時もまた勧めるから(偉そうな言い方だな!)、観念して(?)借りてみることにした。
友達オススメの「赤朽葉家の伝説」はなかったので、よく聞くタイトル「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」を読んでみた。
そしたら思いのほか面白くて、しかも簡単に読めるものだったので、2時間くらいで読み終えてしまった。
なーんとなく雰囲気は辻村深月っぽくて、それよりも軽く、でも決してチープなわけじゃない。
かといって凝縮されて濃厚なわけではなくて、むしろ薄い。
多分、大事なところは抑え抑え書かれているんだと思う。つまり上手いんだろうな。
物語の流れはそんな衝撃的なものではなく、予想できる範囲。それでいてつまらない、と思わせないのは、うん、上手いに違いない。
そんなわけで、がっつり小説を読みたい時は物足りないだろうけど、疲れていてちょっと適当な本を読みたい時には最適な本だった(そして読んだ時は疲れていたのでぴったりだったというわけだ)。
物語の舞台は海沿いの田舎。主人公は中学二年生の山田なぎさ。
ここで定番のように非常に冷めた中学生。
背景としては、ひきこもりの美青年である兄と、10年前に海で亡くなった父とがいる。
そこへ転校生がやってくる。
もちろんのこと美少女でいわくつき。麻薬の前科のある歌手であり俳優である海野雅愛の子供、海野藻屑という。
自分のことを人魚と言っていて、奇妙な言動により他の人たちは遠巻きで見るしかない。
そしてなぜか主人公の山田なぎさを気にいったらしく、まとわりつくのだ。
冒頭にばらばら殺人事件の被害者が海野藻屑であること、そして発見者が同い年の少女ということから、この二人の末路が分かるのだが、ひきこもりの兄もアクセントとなりつつ飽きさせないで物語が展開していく。
つまりはひきこもり、虐待といった現代の闇を描いているのだが、現実的にならざらるを得ないなぎさと、夢の世界に居続けざるを得ない藻屑が対比されるように書かれていて、闇自体を描いているというよりは、それを起点として少女たちの生き方の切なさなが描かれているような気がした。
だからこそ最後の最後になぎさが語る
砂糖でできた弾丸(ロリポップ)では子供は世界と戦えない。
(p205)
という言葉は、夢で防御するのは不可能だと断言しているようで切なかった。
桜庭一樹 「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」 平成19年 富士見書房
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