本の交換会で、自分は交換されなかったけれども面白そうだったから、旅行のお供に買った本「葉桜の季節に君を想うということ」。長いタイトルだぜ。
実は歌野晶午ってよく聞く名前だけど、一度も読んだことがなかった。
読んでみると。。。
のっけからセックスシーン。びっくりしつつ読んでいくと、そんなに過激的な話じゃない。
まぁ 悪徳商法を暴いていく過程で、ハラハラドキドキはあるけれどもそれ自体はまったりとしている。そのメインの話に挿入される形で、主人公が昔探偵事務所で働いている時に、潜り操作でヤクザになったことがあるのだが、その話がハラハラする。
悪徳商法を暴く話なんて、ともすればまったりしがちだけれども、その過去の話がぴりっときかせている。
そうするうちに、悪徳商法もきな臭くなっていき。。。そして驚きのラスト。
本当に最後は驚き。
ということでここからは激しくネタバレ。
この驚きの種類といったら、「ハサミ男」と同じ類のもの。
結末を知ってからこれを言うのは、後出しじゃんけんみたいでバツが悪いが、確かに時々違和感があった。
特にヤクザが話す“昔の有名な抗争”というのが戦後直後ってのが、主人公も知ってる風な話しぶりだけど古すぎやしないか?と思っていた。
あと、どことは明言できないけれども、「これっていつの話だっけ?」と奇妙な違和感を感じることもあった。
が、しかし。
後輩の子が惚れてる女の子(聖心女子出身のお嬢様と書かれる女の子と思うじゃないか!)に頼まれて、
- 通事故で死んだ彼女の“おじいちゃん”は本当は、自分のはまっていた悪徳商法の手にかかって殺されたのではないか、という仮定を暴く
- 高校卒業したてですぐ入った探偵事務所にて経験した、ヤクザの生活。その中で起きた事件の究明
- 自分が教えているパソコン教室で、生徒として出会った老人との交流
と若いように書かれているストーリーラインと呼応するかのように、悪徳商法にはまって借金を重ねてしまい、ついにはその悪事に加担するようになってしまったお年寄りの女性の話が描かれている。
その対比によって、ますますその2つのストーリーラインの登場人物が若い気がしていますのだ(実際、探偵事務所の話は若いし)。
もう天晴れとしか言いようがない書きぶり。
これならだまされても納得がいく。
ここまで書けば蛇足かもしれないが、主人公を始め、登場人物はすでに「お年寄り」。
ちなみに主人公が出会って恋に落ちる相手こそ、悪徳商法にはまって借金まみれのお年寄り女性。
主人公が出てくるストーリーラインでは、えらく若く描かれていたが実は同一人物だったという。。。
なにせ主人公がやたら若い。
自称、「何でも屋」ならぬ「何でもやってやろう屋」である。
(p40)
という心意気が好きだったのだが、その気概は一見若そうに見えるけれども、実際は歳を重ねないと出てこないものなのかもしれない。
って、まったく蓋を開けてからあれこれ納得するのもどうかとおもうけど・・・
とりあえず、主人公の“オレについてこい”気風が気に食わないところもあったけれども、彼がおじいちゃんだったと分かったら、妙にかわいらしく感じてしまった。
歌野晶午 「葉桜の季節に君を想うということ」 2007年 文芸春秋
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