「花咲」シリーズの新刊が店頭に並んでいるのを見て、さっそく図書館に予約を入れてから、待つこと半年程。
本当に本当に忘れた頃に、やっと自分の番になった。そんなに人気なのね、このシリーズ。なんちゃって。
いつもより太めの上に、短編ではない本書。
正直の感想を述べると、ちょっと間延びをした感じがした。
その上、山内のあのちょろり出の仕方を見ると、「花咲」シリーズのレギュラー登場人物はとりあえず出しとかなくては感がちょっと出てて、ここいらで心機一転、違うスタイルでいってもいいんじゃないかと思う(偉そうじゃな)。
ま 私は山内が好きなので、出る分には文句はないけどね。
今回の話は、幼稚園での問題と探偵業の依頼の調査で、ハナちゃんが東奔西走するお話。
まず、探偵業からの依頼として、例によって城島からまわってきたのが、ケーキ屋の「若草」に務めるパティシエの身辺調査だった。なんでもそのパティシエの内野の周りで女性が死に過ぎている。
パティシエの腕前としては、賞を取るくらいのものなのに、パリから帰って来て務めたのがあまり名前の知られていない「若草」。
果たして、彼の目的は何なのか……
お次は幼稚園でのトラブルだが、こちらの方が話の筋となっている。
にこにこ幼稚園で預かっている浩太郎の父親は、もとは有名な推理小説作家だった。ところが今となっては、まったく売れず、というかそもそも出版社が出してくれない。そのためとんでもない貧乏になってしまったのだが、ちゃんとした職歴がないが故に、仕事探しもままならない。
その上に、奥さんに逃げられてしまって、現在浩太郎をにこにこ園で預けつつ、バイトにハローワークにと足を運んでいる。
そんな折に、誰かに襲われ、金属バットに頭をなぐられ命が危なくなってしまう。
なんとか一命をとりとめたものの、意識不明となってしまい、一体いつ気がつくのか分からない状態。
浩太郎をこのまま永遠に預かっておくわけにもいかない、ということで、逃げてしまった奥さんを捜すべく、ハナちゃんはあちこちと捜しまわるのだった。
そして捜しているうちに分かってきたのが、浩太郎の両親は施設育ちだったこと。
奥さんを匿っていた同じ施設育ちの人たちより、その施設は火災にあって、その時に園長と事務長が死んだこと。
「若草」の内野もその施設育ちだったこと、などなどが明るみに出る。
話のオチとしては、割と哀愁漂う感じでよかったけど、こんなにひっぱといてこれか~という感じもしなくもない。
何よりも、内野の身辺調査を依頼した依頼主の動機もなぁって感じ。
それはそうと今回読んで気付いたけど、ハナちゃんって結構、説教くさいのね。
幼稚園の園長と探偵業、という組み合わせから、色々と物思うところがあるんだろうけど;
(妊娠してしまった中学生との会話にて)
(p232-233)
「死んじゃえばいいもん」
「さっき言ったことと矛盾してる。君は、人生を台無しにしたくないんだろう?妊娠したことで自分の人生が破滅しちゃうのが嫌なんだろう?つまり君は、生きていたいんだよ。いいか、ここだけ説教になるけど聞いて。人が話す言葉には、力があるんだ。言葉にすると、物事は具体的に動き出してしまう。だからそんなに簡単に、死ねばいい、なんて言っちゃだめだ。思っていなかったことでも、そうやって口に出してしまうと頭にこびりつく。一度こびりついたら、とってもやっかいなもんなんだよ。それが言葉の魔力なんだ」
てなところは共感が持てたので、引用してみたが。私自身、冗談で「死んじゃえ」とか「死ねばいいのに」って言うのを聞いて、本当に軽くだって言っちゃいけない、と強く思うので。
そういえば、今回、借金を返済する場面がなかったけど、ちゃんと大丈夫だったのかしら・・・?
柴田よしき 「ドント・ストップ・ザ・ダンス」 2009年 実業之日本社
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