よ・読み終わってしまったーー……“守り人シリーズ”最終巻「天と地の守り人 第三部」。
こんなに読み終わってしまって残念なシリーズって久し振りかも。
新ヨゴ皇国の皇軍は、切り捨てるところは切り捨て、籠城を覚悟で帝が住む光扇京を守ることにする。とはいうものの、ずっと平和であった新ヨゴ皇国。兵法も随分古いものでどうにもこうにも頼りなく、緒戦は惨敗となる。
一方バルサは、皇軍に切り捨てられた、かつては行商たちが集まって賑わっていた四路街へやってくる。
そして商人たちに雇われた、バルサの同業人・護衛士たちと話し合い、ロタ王国へ商人・平民たちを逃がすことにした。
間一髪で燃え上がる四路街。そこはタルシュ軍と新ヨゴ軍との戦場となった。
またもや新ヨゴ軍がやられる……という瞬間、チャグム率いるロタ王国・カンバル王国の連合軍が後ろから攻めてくるのだった!
こういう援軍がやってくるっていうのは、お約束っちゃあお約束だけれども、心が躍る。醍醐味というやつでしょう。
あと、「ツボをおさえてますね~」と思ったのが、このシーンのちょっと前で、四路街からの難民たちが騎馬武者に出会うシーン;
先頭の騎馬武者がちかづき、その顔がみえはじめたとき、ガシュは目をまるくした。
p107-110
…(中略)…
そしてロタとカンバルの騎馬兵をひきい、みがきあげられたカンバルふうの胴当てをまとっている先頭の騎馬武者は、なんと、ヨゴ人だった。
…(中略)…
若者は兜をとり、わきにかかえると、しずかな声でいった。
「そなたらに、文書をわたす。イーハン王子への文書だ。戦がおわるまで、わが国からの避難民をうけいれてもらうよう、電化におねがいする。ジダンに着いたら王城へおもむき、この文書をわたすがいい。…(中略)…」
…(中略)…
じっと若者の手もとをみつめていたアオノは、文を書きおえた彼が、末尾にしたためた署名をみた瞬間、息をのんだ。
こおりついたように自分をみているアオノを、若者はしずかにみつめかえした。
…(中略)…
「あ……あなたさまは、い……いきて……。」
かすれ、あわれなほどにふるえている彼に、若者はこたえた。
「生きている。――海から、生きてもどった。」
この章の終りまで、チャグムの単語は出てこずに終わっているのだが、こういう演出とか小にくい。いやぁ~かっこいいですね。
こうしてチャグムは新ヨゴ皇国に戻ってくるのだが、父帝は受け入れず、かといって前のようにチャグムを殺すこともしない。
ナユグに到来した春のために川が増水して光扇京も沈む、というのを聞いても、宮殿と運命を供にすることを決めたのだった。チャグムはそんな父と決別して、連合軍や貴族、平民を連れて高台へと移動するのだった。
そこで繰り広げられる戦。
こういっちゃなんだけど、結構あっさり勝利に終わる。しかもチャグムが寝てる間だったし。でも、個人的に戦いのシーンはそこまで興味がないので、それはそれで全然OK。
タルシュ側としては、戦に負けただけでなくタルシュ王が崩御し、兄王子か弟王子、どちらが王位につくか、という問題も起き、それにまたプラス、ヒュウゴの意見もあって、タルシュ軍は新ヨゴ皇国と和睦を結ぶことにしたのだ。
とざっくりあらすじを書くとこんな感じ。
あ、バルサのことを書くのを忘れてたが、バルサはタンダと出会うことができる。
でもタンダは深い傷を負って、腕を切り落とさなくてはいけない有様だった。
最終的には回復し、もとの家に戻れたとさ、という流れ。
一応、誰も主要人物は死なず、ハッピーエンドになったけれども、チャグムは帝になってしまったし、そうなるとバルサたちと決して会うことはない。
そこが寂寥感漂うエンディングとしている気がする。ハッピーエンドのはずだけど、底抜けに明るいハッピーエンドではなく、憂いが含まれたハッピーエンド、みたいな。
いやぁ~ 今回は三部作だったけれども、でもハリーポッターだとかそういうものに比べて、話の長さはそんなない。
なのにこんなにも「厚く」感じる。これってすごいと思う。
もし、子供時代に読んでたら、影響は大きかっただろうな。
ま、でも、自分が生きている間に読めてよかった。
と思わせるシリーズだった。
上橋菜穂子さんの違う話は、もうちょっとほとぼり冷めてから読もうと思う。
(上橋菜穂子 「天と地の守り人 第三部」 2007年 偕成社)
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