確か三浦しをん女史が面白いと感想を書いていたので読んでみようと思った「黒いトランク」。
もちろん作者の鮎川哲也のことは既知だった。何せ有栖川有栖を世に出したのは鮎川哲也氏らしいし。それに乗じて「リラ荘殺人事件」も読んだことがあるし。
そこでまず感想を正直に言いますと、わたくし、電車とか物の移動が絡む推理小説を苦手としているようです。もうね、地理感覚もなければ数字に弱いとなれば、懇切丁寧にトリックを説明していただいても何がなんだか分からん!
事件の発端は東京・汐留駅に届いた黒いトランクより腐乱死体が発見されたところから始まる。そのトランクの送り主である近松千鶴夫が犯人ということが確定した頃に、彼が瀬戸内海で入水自殺をしてしまい事件は一件落着となる。
それに疑問を抱いたのが千鶴夫の妻だった。曰く、千鶴夫には人を殺す度胸もなければ自殺する度胸もないという。そこで鬼貫警部に再捜査を頼むのだった。というのは、鬼貫警部と千鶴夫は学生時代の友達で、千鶴夫の妻をとりあった仲でもあったのだ。
それはさておき、事件の捜査を進めていくうちに、死体が入っていた黒いトランクとそっくり同じトランクの存在が浮かび上がってくる。そこからどのように二つの黒いトランクが動いて、中の死体がすり替わっていったのかというトリックが暴かれていくのだ。
残念ながら、前述したとおり、わたくしの乏しいおつむではなんだかよく分からないうちに終わってしまいました。
すみません鮎川先生。凝りまくったトリックにはシャッポを脱ぐばかりで、どうにも手も足も出ません。ちなみに、三浦しをん女史がよく使う「シャッポを脱ぐ」という表現が本書に出てきたが、鮎川先生から来たんでしょうかね?
何はともあれ、ちょっと古いだけあって、表現が見慣れないのばかりで面白かった。羅列すると;
…(中略)…ごみ溜にすてられた洋梨<ペア>のように気味わるい色をしている。
p15
彼はそう考えて、自分の頭のなかの疑念を、アンドロメダ星雲のかなたに放りなげてしまった。
p49
彼がもどってきたのは、三時を少しすぎた頃だった。昨日とまるきり変って、満面に喜びをたたえ、それがあふれてポタリポタリと床の上にしたたりおちそうである。
p283
(鮎川哲也 「黒いトランク」 2002年 光文社)
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