Amazon.co.jpにてランキングの中に入っていて、しかもいたるところで「著者がハリウッドで映画化を夢見た幻のシリーズ」なんて書かれていたら読むしかない。
それが「殺し屋シュウ」by野沢尚でした。
彼の作品は「破線上のマリス」を読んだことがあるきり、しかもわりといつもあることですが、内容がさっぱり思い出せない。でも面白かった記憶はある。
ということで、図書館でなかなか借りれない日が続き、古本屋で見つけたときには迷わず買いました。
その時にあっと思ったのが、文庫版の表紙がニール・ケアリーシリーズの日本語版の表紙の絵の人と同じ!(朝倉めぐみさんと言うらしい)
それがきっかけで、シュウとニールの共通点がちらちら見えて仕方のない一冊でした。
話の内容はというと、そのものずばり、舞台は日本、主人公は普段は大学の職員、でも実は殺し屋のシュウのお話でした。短編になっていて、それぞれのタイトルと内容はご覧の通り(以下ネタバレあり);
第1章 ファーザーズ・デイ(そもそもの話の始まり。シュウの父親は悪徳マル暴警官で、あることをきっかけにシュウは父親を殺す事となる。その罪は母親が背負い、シュウは両親の知り合いで、父親のビジネスパートナー(もちろん“悪徳”の部分の)である匠のもとで殺し屋として働くこととなる。)
第2章 マーシー・オブ・サムライ(シュウが殺し屋として特訓を受ける話。そして最初のアサイメントをなんとかやり遂げる。)
第3章 シュート・ミー(薬中で歌えなくなりつつある超人気ロックスター・椎名ゆかを、本人からの依頼により、ライブの最終日、舞台上で殺す話。)
第4章 ショットガン・スコール(やくざの組長からの依頼で、組内で力技という古いやり方を貫き通している部下を殺すことになる。殺した後、その部下こそが組長の父親であり、それを組長も知っていた。)
第5章 スーサイド・ヒル(山荘で一人暮らしをしているかつての映画監督。実はアルツハイマーを患っていて、シュウに毎月一回通ってもらって、もしボケてしまっていたら殺して欲しいと依頼する。)
第6章 ナイト・フラッシャー(高級娼婦が国会議員の危ない情報を得ているとして、客のふりをして暗殺をたくらむ。しかしその寸前で、何者かに彼女は殺されてしまう。)
第7章 キル・ゾーン(人をさらってきて人間狩りをしていた金持ち達。その犠牲者の父親から敵を討って欲しいとの依頼。しかし仕事直前に、依頼者は拷問にかけられた末殺されてしまう。相手方はシュウの恋人をターゲットにする。絶体絶命の危機にたつシュウ。)
エピローグ ニュー・ファミリー・デイ(シュウの母の帰還。シュウとその恋人は結婚する。)
定石となっているのは、シュウの遣う拳銃はいつも違い(7章はライフル)、そして最後はシュウがカクテルを飲んで終わり、というもの。
何がニールと似ているかって、境遇もさながら、その仕事に対するためらいややる気のなさかもしれません。まあ、殺し屋が主人公となる話で、嬉々としてコロシをしているっていうのはなかなかないかもしれませんが。
読んでいる時は「面白い!」と思って、一気に読み終えてしまいましたが、読了後はなんとなくありきたりな話だったな、という印象しか残りませんでした。これが“ハリウッドで映画化を夢見たシリーズ”?とも。それだったらニール・ケアリーシリーズの方が見たいぞ!
と、とことん別の話と比較してしまっては作者に申し訳ないというか、邪道な本の読み方かもしれませんが、自分の心ってのはコントロールしがたいものです。
期待がやたら大きかったぶん、読後の“な~んだ”感は否めませんでした。
(野沢尚 「殺し屋シュウ」 平成17年 幻冬舎文庫)
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