ワトスン君もドイルと同じくスコットランド人なのだろうか?:コナン=ドイル「緋色の研究」

今読んでいる本がシャーロックホームズにちなんだ話なのだが、ふとシャーロックホームズを全作読んだっけ…?となったので、この機会に全部読んでやろうということになった。
きちんと出版された年代順に…と思って図書館に勇んで行ったら、子供用のしかなく。
でもちょっと読んだ限りでは、ひらがなが多いだけで端折ることもなく書いてそうだったので偕成社の本を借りてきてみた。

まずは1作目の「緋色の研究」。
子供の頃にこの偕成社の本で読んだのに違いないのだが、果たして私は理解していたのだろうか…?と思ったのが第一の感想。

だって今読んだ方が断然に面白いよ!
確かに子供の頃はシャーロックホームズよりもルパン!と思っていたけれども、こりゃ大人になってこその面白さだったような気がする。
(ここからネタばれ含みます)



第一作を飾るのにふさわしく、ワトスンとシャーロック・ホームズが出会うところから始まる。
シャーロック・ホームズとベーカー街で住むことになった顛末というのが、こんな感じ;

ワトスンはアフガニスタンの戦争(この時代にもアフガニスタンで戦争があったということを初めて知った…)へ軍医補として従軍したものの、弾にあたり負傷したのでイングランドに帰ってくる。
国から支給されるお金でのらりくらり暮らしていたのだが、底がついてきたので、真面目にアパートを借りて暮らそう、ということでアテを探している時に、知り合いの紹介で出会ったのがホームズだったのだ。

大変変わった人だったけれども、なんとなく馬があって、何よりもホームズの特異な才能に魅かれるワトスン。
そんな折に警察から難解な事件が発生したので助けてほしい、という依頼を受け、暇なワトスンがホームズについて行くのが、この後に続く長いシリーズの発端となるのだった。

今回の事件は、空家に死体が転がっているというもの。
そして犯人が書いたと思しき“RACHE”という血の文字が。

被害者はアメリカ人で、ヨーロッパを旅行中だったようだ。
秘書のアメリカ人もいて、その人が怪しいと警察は睨んで捜査するのだが、その人も死体となってホテルで見つかる。

最初の被害者の元より、女物の結婚指輪が見つかったのだが、どうやら犯人はそれを取りに帰って来たものの警察が居たため酔っぱらったフリをしてやり過ごしたようだ、ということが分かる。
そこでホームズは指輪を見つけた、という広告を新聞に出すのだが、果たしてそれを取りに来た人物は出てきたものも、取り逃がしてしまう。

次の手掛かりは、空家の前のわだち。
ホームズの観察により辻馬車と分かる。
そこでホームズは、ロンドンの浮浪児を使って捜査を進めるのだった。
この浮浪児によって、ホームズは辻馬車の御者を犯人として捕まえる。

面白いのが、ホームズの推理の説明の前に、この御者が犯罪に至ったまでの過去話が挿話的に入っているところ。

舞台は砂漠が広がるアメリカ。
ある集落が干ばつに見舞われて、一人の男の女の子を残して死んでしまう。
そこに通りかかった一向により、この男と女の子は助かるのだが、その集団というのがモルモン教の人々だった。
この集団に入る条件だったので、男と女の子はモルモン教徒になる。

何年か経ち、女の子は育つ。男は敬虔なモルモン教徒となっているが、唯一教えに反して結婚していない。
そんな折に外の世界からある青年が現れる。恋に落ちた少女と青年。男もこの二人が結婚することを望む。
そこに立ちはだかるのがモルモン教徒達。少女とモルモンの青年が結婚するか、さもなくば死か、という選択に迫られた男達は、密かにこの集落を逃げ出すのだった。
ところが青年がちょっと目を話している隙に、男は殺され、少女は連れ戻されてしまう。
青年が追いかけると、モルモンの青年と結婚させられ、失意のうちに少女が死んでしまったことを知る。

こうしてこの青年の復讐劇が始まるのだった。
そしてロンドンの地で復讐劇の幕が閉じられた、というわけだった。

「緋色の研究」は読んだことがあるはずだったのに、まったく覚えておらず、突然このアメリカの話が出た時には唐突すぎて驚いた。
でも読み進めると、ホームズの話に匹敵するぐらい面白かった。
モルモン教について、ちょっとはドイル時代の偏見が入っているかもしれないけれども、運命のいたずらによって宗教村に入ってしまった話から脱走劇まで、それだけでも十分面白かったと思った。


コナン=ドイル 「緋色の研究」 1984年 偕成社

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