またもや三浦しをんさんのお薦め本。着々と読みこなしています。
今回は「琥珀枕」by森福都
計七編の読みきりが集まった一冊。
その七編通して登場するのが、東海郡藍陵県の県令の一人息子、趙昭之と、塾師徐庚先生(実はすっぽんの妖怪)。
七編は読みきりとは言えども、その昭之と徐庚先生が、藍陵県を眺めながらそこで起こるハプニングを見ている、という設定になっていました。
その出来事に関して、昭之くんが質問したり、それに徐庚先生が答えにならない答えをしたり、という感じで随所にこの二人が出てくるのみ。
最後の二編以外は、はっきりいってこの二人が必要なのか?というくらい、出来事に関係がない二人だったりする(そのうちの一遍に関しては、登場人物に情報を与えるけれど)。でも、この二人がいるからこそ、この小説が面白いのかもと思えました。
というのは、この二人がぽつぽつコメントするもんだから、本当にこの二人と一緒に、岡の中腹にある亭から藍陵県を眺めているのような気がする。いわば、出来事を俯瞰している感が、この二人を登場さえることによってぐっと引き立つような気がしたわけです。
ま、私が、師弟ものが好きっていうのもあるのですがね。
しかし
ここでも映画の法則の一つ、「先生ものは、最後にその先生が去って終わる」というのが当てはまるのかぁぁぁあああ!と思わず叫びたくなることに、徐庚先生が去ってしまうわけです。最後に。おいおいおい
ま それはともかく。一番面白かったのは「妬忌津」で、方士まがいの男と彼の人面瘡の妻がいい!(なんか遠い記憶で、三浦しをんさんもいいと言っていたような・・・)
田辺聖子の百人一首の本で、登場人物の一人が「幽霊妻ってのはいい」と言っていたけれども、幽霊妻よりも人面瘡妻のほうがいいや・・。何がどういいってなんかよく分からないけれども、これを読むと、なんとなく「いいなあ・・」と思えてしまう。
あと、「双犀犬」という、昭之くんの母君の話も面白かった。ああいう、女の子が冒険する話は、なんかとても好きだなあ、と思ってしまう。
その母君の話を昭之くんが語り終えて、徐庚先生が残したコメントが、なんか本当に母君の人生を表していて、そしてその人生が楽しそうだったのでいいな、と思ったのでした;
女とは、予言や占いを信じ従っているようでいて、その実、己が心の命ずるままにしか動かぬ生き物よ。所詮、女の運とは女の志のしもべ。強い志には運のほうが歩調を合わせてくるものじゃ
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