「思い出のマーニー 上」があまりに面白くて、いそいそ下巻に手を伸ばしたらあっという間に読み終えてしまった。(以下ネタバレあり)
相変わらずマーニーとの関係を築いていくアンナ。
ところが、マーニーが恐怖心を抱いている風車に、夜訪ねて行った日からその関係が変わる。
風車にはマーニーがいて、二人して風車の2階から降りれなくなってしまったのだ。ところが二人が疲れて寝ている間、マーニーは自分を探しに来た人とアンナを置き去りにして帰ってしまうのだった。
ショックと悪天候より、大風邪をひいてしまうアンナ。
病後、意を決してマーニーを訪ねると、あっという間に仲良くなってしまうのだが、マーニーは遠くに行かなくてはいけないという。
マーニーとの別れのシーンである、嵐のシーンは切なかった。
アンナは、もう一度、窓を見上げました。マーニーの顔は、目をくらませる激しい雨のむこうに、もう完全に消えていました。それでも、アンナは、さよならの気持ちをこめて、ほほえもうとしました。激しく手をふりました。…(中略)…ふと顔を上げたアンナの目に、やしきはやっぱり、からっぽに見えました。じっとこっちを見つめているような、からっぽの、どの窓のうしろにも、だれもいないようでした。やしきは、もう長い間、ずっと空家だった――ように見えました。
(p34)
それからまた一人ぼっちになってしまったアンナ。でもだんだんとマーニーの記憶が薄れていく。
そんなときに新しい出会いが訪れる。
マーニーの家に引っ越してきた5人兄弟だった。
そのうちの一人が、マーニーの日記を家の壁の隙間から見つけた、と言って見せてくる。
マーニーとは一体誰だったのか?
というのが下巻の流れとなるのだが、ま 結果は上巻の頃から薄々感じていた通り、そして別れにシーンからも推測できるように過去の人だったのだ。
でもここからは予想もしていなかった部分なのだが(ここから激しくネタばれ注意!)
マーニーはアンナの亡くなったおばあさんだったのだ!
その事実の提示の仕方がとんでもなくうまかった!
マーニーのことを、ここに昔住んでいたことのある5人兄弟の両親の友達から聞くのだが、どんどん彼女の思い出話が進行していくうちに、これってもしかして…という展開になっていく。
アンナがマーニーのことをあんなにもすぐ忘れてしまうことは腑に落ちないし、アンナが最終的に他人に心を開くようになった、という展開はありきたりかもしれないけれど、児童書だからと侮ってはいけない面白さがあった。
ペグおじさんやおばさんなんて、割と典型的なイギリス人で懐かしく感じたのも事実で、原書で読んだら二人の訛りがきちんと書かれているだろうから、もっと面白かっただろうな、とも思った。
ジョーン・ロビンソン 「思い出のマーニー 下」 松野正子訳 1980年 岩波書店
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