★★★★☆
本日のBest:レンブラント《フローラ》
感想
年明けると結構すぐに終わってしまうことに気付いて、12月中に行ってしまおうと思って行ってきた。
さすがメトロポリタン美術館、展覧会タイトルの副題にあるように、西洋美術史がしっかりと俯瞰できる展覧会になっていた。
しかも良かったのが、ブロックバスター的展覧会の割には、展示数がすごく多いというわけではなく、疲れない程度の適度な点数だったこと。
更に個人的に好感が持てたのが、いわゆる”目玉作品”を作らずに、すべての作品が平等に扱われているところ。
それこそ日本人大好きなフェルメールやゴッホの作品もあったのに、それらを恭しく飾るということもなく、「あら、こんなところにいたのね」的な所に飾られていたのは、展覧会によっては目玉作品を大きなスペースとってスポットライトまであてて飾られるのに辟易している身としては、心ざわつかせずに鑑賞できたって感じ。
西洋美術史を網羅していると書いたけれども、一応、写実主義を間にはさんでから印象派などを展示していたけれども、やっぱり、古典的な作品を順々に見た後に印象派来ると「おお…」とびっくりしてしまう。
突然、画面がすごく明るくなって、サングラス欲しいよ!って気分になるというか。
逆にいうと、印象派がどれだけ革新的なものだったのがよく分かると言えるけれども。ちょっと、古典的な作品を楽しんでいた後に、頭がついていけなかったのは、自分の切り替えが悪いからか。。。
まとめると。
こんな人におすすめ
- 西洋美術が好きな人は当たり前のことながら、
- 西洋美術の知識をあまり持っていない人も、ちょっとでも興味あれば是非!
- 網羅的に見れるので、西洋美術事始めに最適かと
こんなところがよかった
- 作品数が適当なので、あまり疲れない
- さすがメトロポリタン美術館、有名どころの画家・作品がばんばんある
印象的だった作品
画像はメトロポリタン美術館のホームページから。
因みに、メトロポリタン美術館のホームページは所蔵作品を検索してダウンロードもできるのでお勧めです。
ダヴィデ・ギルランダイオ《セルヴァッジャ・サッセッティ》
細かい細かーい肖像画、本当に感心する。。。薄いレイア―をいくつも重ねて描いているっぽく、細かさとその根気の強さ(といったら変な感じだけど)にただただ感心。
しかもこの作品に関しては、この手の込みようが絵の雰囲気にきちんと貢献していて、画家の巧みさがふんだんに出ている作品だった。
ラファエロ・サンツィオ《ゲッサマネの祈り》
こちらは良くて印象的だったというよりも、これがあのラファエロの作品なの!?というびっくりで印象的。なんというか、キリストがいつも見てる感じと違って、ちょっとおっさんくさい。。。
フラ・フィリッポ・リッピ《王座の聖母子と二人の天使》
いつもの通り(?)、赤ちゃんのキリストがまー可愛くない(笑)。フラ・フィリッポ・リッピは横顔が好きなので、やっぱり天使の横顔可愛いなーと思って見てた。そして大理石の描写を頑張ったのね、という感じも。
ルカス・クラーナハ(父)《パリスの審判》
一目でクラーナハと分かる。決して好きではないけれども、印象の強さというと一番というくらいの強烈さ。パリスの審判というと古代ギリシャの話のはずなのに、まったくギリシャ要素がゼロなのもいっそすがすがしいくらい。3人の裸体の女性は、アフロディテ、ヘラ、アテナということは分かるけれども、誰が誰かは分からず、勉強不足なせいか目を凝らしてもそれを示すものがなくて気になってしまった。キャプションの説明にもなかったので、そもそもアトリビュート(誰かを示すもの)はないのかな…
パオロ・ヴェロネーゼ 《少年とグレイハウンド》
東洋画は輪郭線があって西洋画は輪郭線がない、という超ざっくりな比較をしがちだけれども、この作品みたいに輪郭線がある場合もあるんだなーと思っての印象的な作品。輪郭線があっても、あまり輪郭線を感じないのはなぜなのか。逆にそれだからこそ、輪郭線内が立体的でも破綻を感じないんだろうな。
ティツィアーノ・ヴェチェッリオ《ヴィーナスとアドニス》
美しい女神のはずのヴィーナスの顔はほぼ描かれておらず、背中でその美を表現しているところにすごいなと。そしてちゃんと背中が美しい。色幅をおさえて、ほぼモノトーンで描いているからこそ、肌の白さが際立っているのかな。
因みに、美青年のはずのアドニスはあまり美しくない。。。
ペーテル・パウル・ルーベンス《聖家族と聖フランチェスコ、聖アンナ、幼い洗礼者ヨハネ》
絵全体としてはあまり好きではないんだけれども、眼の澄みようには感動レベルのすばらしさだった。黒目(というか茶色?)が大きく、その中の瞳孔にあたる黒い部分の割合が多いから、輝いている部分がよけい輝いて見えるのか…
色彩の美しさといい、マリアや聖アンナのいそうな顔で臨場感出ているところから、ルーベンスが人気だったのは分かる。個人的にセルライトっぽい皮膚の感じが嫌なんだけど…(自分を思い出してしまうからかも!?)
カラヴァッジョ《音楽家たち》
やっぱりカラヴァッジョって天才だなーと思った一枚。カラヴァッジョ展にも行ったけれども、こうやって他の画家たちと一緒に並べるとつくづく感じる。
画面にぎゅっと詰め込まれる感じがしつつも、統制はきちんとされつつ、動きもあって、細かく見ても見ごたえがある。
少年たちの顔が全然好みではないのに、とても魅力的な作品。口をうっすら開けているのがちょっとエロティックだし、楽器の上に置く手の繊細さ、後ろ向きの少年の背中から腕の肌の感じ。ずっと見てても飽きない。
カラヴァッジョは、ずっと何となく好きではない画家だったけれども、ある時のカラヴァッジョ展から俄然好きになってしまった画家。以前の自分からすると噓みたいに「すてきだー」と長々と堪能した。
ジョルジュ・ド・ラ・トゥール《女占い師》
カラヴァッジョの《女占い師》を皮切りに流行したこのテーマ。カラヴァッジョよりも登場人物が増えつつも、動きは減っている。その分というのか、ディテールが豊富になっており、舞台を見てる感じになっているのが面白い。占いをしてもらう男性も、どことなく積極的じゃなく、ちょっと不審そうな顔をしているのもちょっと面白い。でも結局騙されちゃうのね…みたいな。
レンブラント・ファン・レイン《フローラ》
本日のBest。
先ほど散々カラヴァッジョを絶賛しておきながら、レンブラントの前に立つと、やっぱりレンブラントが好きだ!となってしまう。
茶色い背景から浮かび上がっていく感じがたまらなく好き。筆の掠れもすっかり計算しつくされているところとか。多分、この《フローラ》よりも立派な作品はあったんだろうけれども、完全に私の好みです。レンブラントの前に立つと無条件に”好きだ!!!”となってしまう病気というか。
レンブラントを前にすると、あまりに冷静さを失うので、いつかレンブラントの描き方についてじっくり冷静に分析してみたい。
ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー《ヴェネツィア、サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂の前廊から望む》
この辺から画面が明るくなってくる。このターナーの作品は本当に光が美しくて、どんよりしたイギリスからやってきたターナーが、いかにイタリアの光に魅了されたのかがよく分かる。ターナーはクロード・ロランに影響されたと言われるけれども、この光はまぎれもないターナーのものだよな~と、同じく展示されているロランの作品を見ながら思う。
奥に行くほど水の色がきれいな青になるのとか、船とその影の濃い色のコントラストとか、すみずみまで広がる明るさに貢献しているのかなぁと思った。
確実に部屋にかざったら、部屋が明るく、そして広く感じそうな作品。欲しい(言うだけただなので言ってみる)。
アルフレッド・シスレー《ヴィルヌーヴ=ラ=ガレンヌの橋》
ターナーのような息をのむ圧倒的な美しさはないんだけれども、シスレーの庶民的な感じがする光も好き。幼稚園のスモックみたいな水色を、なんの戸惑いなく使って、しかもそれが生きているのがすごい。のどかな平和な一枚。
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