イギリスに遊びに行った時に本屋で並んでいたので、「確実に日本に売ってないしいいよね!」という言い訳で、荷物が重くなるのを承知で買ってしまった。
結果としては大満足。
やっぱ、面白いわ~、この人。
日本ではStephen Fryの本は何一つ翻訳されていないけれども、本当に面白いんだけどなぁ。まぁでも日本語にしてしまったら、面白さが激減するくらい、イギリス英語独特な言い回しを面白いような気がするが。
本書は彼がケンブリッジ大学に入学してから、最高に売れた30歳までの自伝となっていて、サブタイトルが総て“C”から始まる凝りよう。
実は彼の事はコメディアンとしてしか知らなくて(しかも実際に彼のコメディーを見たことがない)、本当は俳優からスタートしていたということを初めて知った。
本書の前に”Moab is My Washpot”があるみたいで、それを読んでからの方が格段に面白かったのだろうけれども、どうやら(今更ながら)”The Liar”は自伝的小説だったみたいで、それを読んでいた私は、難なく読むことができた。
Stephen Fryの作品を読むたびに思うけど、本当に彼の文体が好き。
決してダイレクトに語らず、色んな言葉を使ってごちゃごちゃ言う感じがなんとも言えない。
自分でもそこんとこを自覚しているようですが。
しかもウィットに富んでいて、それも好き。
例えば、歌が下手で絶対に口パクでしか歌わないというエピソードで;
At John Schlesinger’s funeral at a synagogue in St John&s Wood some years ago the person I stood next to said to me encounragingly, ‘Come on, Stephen – you’re not singing. Have a go!’
‘Believe me, Paul, you don’t want me to’, I said. Besides, I was having a much better time listeining to him.
‘No. Go on!’
So I joined in the chorus.
‘You’re right’, Paul McCartney conceded. ‘You can’t sing.’ (p401-402)
何気ないけれども、話し相手がポール・マッカートニーっていうのをオチとして出してるの妙にツボ。こういう細かい部分での、“話を面白くする見せ方”ってのが私の好みに合っている。
あとはStephen Fryの作品に共通するのが、イギリスのUpper-Middleクラスの生活が分かるところも魅力的。
とくにOxbridgeの生活なんて、非常に興味津津な私としては、Cambridge生活の部分は大変面白かった。
正直、俳優・作家として大成していく部分は、沢山に有名人が出てこようとも知らない人ばかりだったので(もちろんポール・マッカートニー級になると分かるけど)、そこまで面白くなかったので、割とすっとばしてしまった。
それにひきかえCambridgeの生活ときたら。
私自身Cambridgeはとても好きな場所なので、そこが生き生きと描かれているのが良かった。
なんというか、あんな頭良くて、家柄がいい人たちが集まる場所を、軽快に面白く書かれているってのは、なかなかないんじゃないかな。
基本的には面白いのだが、1点なかなか考えさせられたのが“Incuriosity is the oddest and most foolish failing there is.”(p87)という言葉。
(歩道いっぱいに金が転がっている街で、物乞いが「お金をめぐんでください」と言ってきたら?という例え話の後)
When people complain that they don’t know any literature because it was badly taught at school, or that they missed out on history because on the timetable is was either that or biology, or some such ludicrous execuse, it is hard not to react in the same way.
‘But it’s all around you!’ I want to scream. ‘All you have to do it bend down and pick it up!’… As one who was expelled from any number of educational establishments and never did any work at any of them, I know perfectly well that the fault lay not in the staff but in my self that I was ignorant. Then one day, or over the course of the time, I got greedy. Greedy to know things, greedy for understanding, greedy for information. (p87-88)
Stephen節とCambridge生活の描写、それだけで満足な一冊だった。
最後の展開として「え!?Stephen!?」てな感じで終わってしまっているので、多分続編が出るのだろう(なんせ自伝ったって30歳までしかないので)。是非読みたいところだけど、その前に前作の“Moab is My Washpot”を読まなくては!
Stephen Fry “The Fry Chronicles”, 2010, Penguin Books
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